一着のレインコートをめぐる小説風断片

和米基喝杯咖啡 2016-07-11 21:44:25

新出土的村上春樹短篇。

男子專科官方公開全文,村上春樹1981年寫的(像小說的)文章,這篇村上春樹作品集未收錄,也完全查不到資料,好在有『男子専科』復刊計畫才能重見天日。

http://danshi-senka.com/archives/499
https://www.douban.com/photos/album/1632189396/

男子專科 1981年1月号

DANSEN FASHION 哲学 No.111

村上春樹:一着のレインコートをめぐる小説風断片

例えば小説を書く。

もちろんちょっとしたスケッチでもいい。これなら簡単た。頭の中にふと浮かんだひとつのシーン、それで十分だ。

例えば・・・・・・登場人物は1人の男、外は雨。季節は11月、秋の終わりの雨だ。それは氷のように冷やかな冬の雨でもなく、思わず手のひらに受けてみたくなるような温かい春の雨でもない。とにかく、それは11月の雨だ、まずそこから始めよう。

雨は休みなく降り続いていた。いったいいつから降り始めたのか、誰ひとり覚えてはいない。そんな雨だ。最初の水滴が微かな予感のように音もなく地上に舞い下り、長い時間をかけて雨へと変わっていった。人々が気づいた時にはアスファルトの舗道はすでに黒く染まり、ところどころに小さな水たまりさえ作り出していた。それは1枚のカーテンのように、ひとつの季節を区切る雨だ。

広い草原のまんなかにぽつんと車を停め、一人ぼっちで温かいスープでも飲みながら眺めたくなるようなタイプの雨だな、と彼は思う。きっとテレビのコマーシャル・フイルムにでもなったような気がすることだろう。悪い気分じゃないかもしれない。しかしもちろん、彼のいる場所は広い草原のまんなかなんかじゃない。彼を取り囲んでいるのは多くの人々が長い時間と膨大な労力を注ぎ込んで築き上げたコンクリートの巨大な迷路だ。都市---自動ドアとエア・コンディショナーとパーキング・メーターの壮麗な歓楽宮。

彼はウエイトレスの運んできた2杯目のコーヒーに口をつけ、そしてなかば反射的に腕時計を眺める。4時15分。

これがシーンだ。

このシーンが語っているものは、11月、雨、都会、喫茶店、夕方、そして男をくるんでいる軽い倦怠感・・・・・・そんなあたりだ。

次に小説が為すべきことは、この男への肉づけだ。彼は何歳で、どんなタイプの男で、いったい何を考えているのだろう? 急ぐことはない。プラモデルを組みたてる時のように細かい部分からゆっくりと始めよう。

まず最初に、コートだ。

彼の座った隣りの席には、雨の色に染まったレインコートがぽつんと置かれていた。シートが濡れないようにライニングを表にして小さく折り畳まれたレインコートの姿は、まるで年老いた小動物のように見える。きっともう10年は使い込まれているのだろう。ぶ厚いベージュの中にうっすらとかすんだ白が混じり、肩口には脱けがらのような奇妙な温かみが漂っていた。気持のよいくたびれ方ではあるにしても、くたびれていることに変わりはない。一流ホテルのクローク係なら、5ミリくらいは眉をしかめそうなコートだ。

しかしそのコートはぴったりと彼の体に馴染みそうに見えた。別な見方をすれば、そのコートは彼そのものだと言うこともできる。歳月かゆっくりと彼を擦り減らせてきたようだった。歳は28から33。そのうちのどれを言われても、殊に反対する理由もない。あなたは目をつぶってカードを引く・・・・・・31、それが彼の歳だ。まるで何かの記念品のようにアドレセンスの影を引きずりつづけ、ある日それがプツンと切れてしまったことに気づく。そんな歳だ。

・・・・・・これがコートだ。書きながら、僕にもこんなコートがあればいいな、と思う。そしてそのコートのことを少し考えてみる。それも文章を書くことの楽しみのひとつだ。きっとハンフリー・ボガートが着ていたような大柄のトレンチ・コートに違いない。フラップつきの大きなポケットがついていて・・・・・・ポケット?

そうだ、ポケットの中にはいったい何がはいっているんだろう。もちろん表からは見えやしないけれど、がっかりすることはない。 コートのポケットをひっくりかえす、それたけのことだ。例えば・・・・・・

男はもう一度腕時計を眺める。4時22分。とりとめのない奇妙な時間だ。人は午後4時22分にいったい何をすればいいのだろう。酒を飲み始めるにも、髭を剃りなおすにも早すぎる。夢を見るには遅すぎる・・・・・・おそらく。

彼は何分か迷ってから、脇に置いたコートを手に取ると、両方のポケットに手をつっこんで中身をガラスのテーブルの上にあらいざらい並べてみる。まるで死体を漁っているようだな、と彼は思う。それも自分自身の死体、まだ微かな温もりの残った死体だ。まあ、いいさ。死ぬのは怖くなんかない。嫌なのは雨と、この夕暮前の一刻だ。彼は一度だけ頭を振って、テーブルの上に意識を集中する。

まず最初に茶色いコードヴァンの札入れ、中には何枚かの札と名刺が無造作につっこまれている。たいした額の金ではない。女の子と2人でホテルのバーにでかけて2時間ばかり気持よく酒を飲み、彼女をタクシーで家まで送り届ける、その程度の金だ。

次に飾り気のない銀メッキのキー・ホルダー。25歳の誕生日のちょっとした記念品だ。そこにはアパートの鍵、そしてわけのわからない(本人でさえ用途を忘れてしまったような)ふたつの古い鍵。何処かで鍵穴を喪失してしまった2本のモニュメントだ。

長い間使い込まれてきた黒いビニールの手帳と細いシャープ・ペンシル。音楽会の半券が2枚。そしてバラバラの小銭。白いハンカチが1枚。

彼は小銭を何列かにきちんと並べ、残りの品物をもう一度コートのポケットに収める。そしてコートを丁寧に折り畳み、椅子の上に戻す。

4時28分。彼は小さなため息をつき、無意識に肩をすくめる。

さて、これがボケットの中身だ。めぼしいものがあるわけではない。そこにはいっているものはささやかな生活の匂いだ、おそらく彼はそれほどの金持ちではないだろう。もっとも貧乏なわけでもなさそうだ。趣味だって悪くはない。少なくともルイ・ヴィトンの札入れを持ち歩くというタイプじゃない。自分なりの世界でそっと生きつづけ、他人に対してうまいことばがみつからないままになんだか疲れてしまった。そんなあたりかもしれない。

ガールフレンドが1人いるかもしれない。コンサートの半券が2枚、おまけに同じもぎり方だ、そして2人ともお互いに少しくたびれ始めているのかもしれない。彼はあまりにも雨を気にしすぎるし、あまりにも時計を眺めすぎる。

4時35分、彼は片手に小銭を握り、レジスターの脇の赤電話に向かう、そしてダイヤルを回す。何百回と回してきたナンバーなのに、まるでとりかえしかつかないほどもつれてしまった数字のかたまりのような気がする。何回かベルが鳴るあいだ、彼は胸のポケットから煙草を取り出し、湿っぽい紙マッチで火を点ける。煙草までがどこかで湿ってしまったような味がした。

ベルは沈黙の中で際限なく鳴りつづける。7回、8回、彼はべルの数を数えながら自分の足もとを眺める。朝にはしっくりに足に馴染んでいたキャメルのデザート・ブーツは雨に濡れて黒く染まり、洗ったばかりのコーデュロイのズボンはすでに膝が抜けかけていた。まるで他人の足みたいじゃないか。

11回、12回・・・・・・

いや、結局はこれが俺の足なんだ。俺はこの足で、これからどれだけの距離を歩かなきゃならないんだろう。

15回までベルの音を数えてから、彼はそっと受話器を置く。

通りではまだ雨が降りつづけていた。弱まるわけではなく、かといって強くなるわけでもない。のばされた思い出のように、雨はこのまま永遠に降り続のくかもしれない。

まるで水族館の中にいるようだな。彼はふと、子供の頃に何度も通った近所の水族館の光景を想い浮かべる。人通りの途切れた暗い水族館の通路だ。冷やりとした水槽のガラス窓に何度も頬を押しつけてみたっけ・・・・・・。

信号が青に変わり、彼は歩き始める。傘はどこかに置き忘れてしまったようだった。両手はまるで呪縛にかけられたように、コートのポケットの中にすっぽりと収められていた。不思議だ、よりによって雨の日に傘を忘れちまうなんて。

街は芯までぐっしょりと濡れていた。そして歩くにつれて彼のレインコートも黒みを帯びていくようだった。草原のまんなかに辿りつく前に、俺の体はきっとこわばって、このまま雨の街に閉じこめられてしまうのかもしれない、と彼は思う。

信号が赤に変わり、彼は立ち止まって口に煙草をくわえる。迷路のようなコートのポケットから紙マッチを取り出すまでに、ずいぶん長い時間がかかった。
和米基喝杯咖啡
作者和米基喝杯咖啡
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