うみねこのなく頃に EP7真相考察
EP7 Requiem of the golden witch
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EP7のヤスの回想から読み取れる重要な部分は大きく3つだ。それはヤスの身の上話の部分とヤスが黄金を受けついだ事とヤスの恋の話だ。ヤスは金蔵が夏妃に預けた九羽鳥庵のベアトの子供であり、崖から落ちたものの、南條により一命を取りとめ福音の家で幼少期を過ごしている。右代宮家に使用人として源次に連れてこられており、金蔵がまた過ちを犯すのを恐れてヤスの年を3歳少なく申告している。碑文の謎が掲げられた時に紗音と嘉音がいる時に源次は「懐かしき故郷とは台湾の事だ」とヒントを出しており、源次は元々ヤスが金蔵の子供であると明かすつもりだったのが分かる。つまり、右代宮家に連れてこられ、碑文を解き、金蔵が反省したのを確認して2人を引き合わせるという筋書きがあり、それがクレルの言う「人生の岐路に置いて私は一度も自分で運命を決める事が出来なかった」という言葉の意味だ。
ヤスが碑文を解く事によって共犯の買収に使える黄金と、最後に皆殺しが可能な爆弾を手に入れてしまい、本編でいう「本当の魔力を手にしてしまった」という部分にも繋がる。これで事件のおぜん立てがそろった訳だ。
ヤスの回想で重要なのは紗音人格の戦人との恋の描写であり、戦人が約束を忘れていた事により紗音は耐えられなくなり、戦人への恋の芽をベアト人格に預けている。この部分はEP6の恋の試練の部分に伏線があり、ベアトは主人格の「お母様」によって戦人を愛する人格へと作り直されてる描写があり、これ以降ベアトは「自分が戦人を愛する人格」として行動をする。ヤスの回想は事件の2年前で終わっているが、その後は延々本編中で語られた通りだ。紗音が譲治に恋をして86年の親族会議の日にプロポーズされる。一方戦人が86年に帰って来る事によってベアトに預けていた戦人の恋の芽が再び活動を始める。EP6の恋の試練の部分が正にこの部分を指しており「2つの人格が違う人間に恋をしている」状態だ。クレルも「決闘はしたのです。決着もつきかけていた。でも86年という年は余りに無慈悲が過ぎた。なぜ86年だったのか…」と語っている。85年なら譲治がプロポーズをしてないので戦人と素直に結ばれたかもしれない。あるいは87年なら既に譲治と結婚しているから、戦人の事はすんなりあきらめられるかもしれない。
・動機のポイント
ここまでの部分から重要なのはヤスが「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」これを自分で決められなくなっている点だ。ヤスが右代宮家に連れてこられ、碑文を解くまでの過程を「自分の意思が一切関与できなかった」と信じているヤスは、自分の運命をルーレットに任せる決断をしている。そして、自分の決めたそのルールに絶対に従うと。つまりヤスの動機というのは「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」をルーレットによりどっちかに決めるという事なのだ。動機というのを「殺人事件を起こす動機」という風に考えるのはその時点で間違いだ。ヤスの回想に右代宮家に対する恨みなどは一切描かれてなく、あくまでもヤスは事件をルーレットの手段として使うだけで、事件自体が目的ではない。
・ヤスのルーレットの目
以上の事から、ヤスがやろうとしてる計画にはルーレットの目として「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」が存在していないといけない。なぜならそれをルーレットにより選ぶ事が目的であるからだ。そしてもう一つ「誰とも結ばれない」が存在する。これは以前に語った部分でもあるのだが、「そなたの罪により、この島の人間が、大勢死ぬ。誰も逃さぬ、全て死ぬ。」という赤字は、戦人が約束を忘れている事が原因となって、島の人間が全員爆弾によって皆殺しにされる、と読み解ける。戦人が約束を忘れているという事は、「戦人と結ばれる」が達成できなくなる。これは譲治と結ばれず、戦人とも結ばれない目が出た場合、ヤスは爆弾によって全員を殺し、良くいえば「黄金郷で全ての人格が思い人と結ばれる」悪く言えば「誰とも結ばれなかった絶望ゆえに心中をする」という事なのだ。
・それぞれの恋のルーレットの目
これまで過去EPで語って来たように「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」はヤスが奇跡的な低確率で出る事を祈っているルーレットの目であり、事件の中でも「奇跡的に出る低確率なルーレットの目」といえる。まず紗音は譲治にプロポーズされているので、碑文が解かれると事件を中断し、黄金を解いた人に継承し、紗音は譲治と結婚しそのまま島を離れて幸せになるという目が成立する。碑文殺人による事件部分自体は過去何度も「戦人が解ける事を祈って作られた」と語られてるように、戦人のために作られたものなので譲治には関係がない。つまり、戦人が事件の謎を解き、犯人の正体を暴き、トリックや事件の構成要素「密室」「嘘」「共犯」や犯人の動機を推測した先に戦人が約束を思い出し、最終的に戦人がヤスの思いを受け止めるという可能性にかけた物で、これも確率的には非常に低く、それでもこの目が出たならば「戦人と結ばれる」が成立する。そして最後に誰とも結ばれなかった場合爆弾によって全員皆殺しが起きる。
・ヤスと魔法大系の思想
ヤスが最後に爆弾による皆殺しを予定してる部分は、「皆殺しにしたいから設定してる」という事ではない。これはEP2で詳しく解説した彼女の魔法大系の思想と「リスクの概念」が非常に重要になるので参照してほしい。
・奇跡が無ければ達成できない願い
ヤスは赤ん坊の時に使用人と共に崖から突き落とされ、大けがをした際に「恋の出来ない体」になってしまったと、クレルのハラワタで挿入されるシーンで語られている。インタビューでも竜騎士07先生によって、性的な不具合によって子供が産めない体になってしまったんじゃないか、と読み取れるようなニュアンスの説明がされており(譲治の語る子沢山の未来像が紗音にプレッシャーを与えていたというような説明)、恋愛を成就させる事自体がヤスにとっては難しい事だ。相手が自分の体を受け入れて一生愛してくれるのかどうかなんて分からない。ヤスが奇跡的な低確率で出るルーレットの目に運命を託しているのは、奇跡が起きるのなら、きっと自分の「恋の出来ない体」の事も相手が受け入れてくれる奇跡が起こるに違いないという、ヤスの願いなのだろう。
・クレルが理御に言ったセリフ
「ありがとう。……幸せになって。そして素敵な人と出会って。……願わくば、あなたが魔女として目覚めず、ニンゲンとして生き。……一なる魂を以って、愛するたった一人の人を愛しぬける……。……そんな人生を送る事を、願っています」
・ヤスの具体的な計画
ここまで語って来たヤスのルーレットの目が出るために、具体的にはどういう事件を想定していたのか、これはハッキリ断定できるので詳しく説明をしたい。一番大事なのは事件部分であり、「ヤスに殺意があったのか」「ヤスには殺意がなかったのか」これが非常に重要になって来る。
1.殺意のある計画殺人説
ヤスがまず右代宮の人間を殺そうと思っており、計画殺人だったと仮定した場合、まず事件が発生する前に碑文が解かれたならば、「譲治と結ばれる」が成立する。しかし、碑文は何も前日だけに解かれるとは限らない。第一の晩の後にEP3のように解かれる可能性だってあり、その場合いくら碑文が解かれて紗音が譲治と結ばれるという目が出たとしても、殺人者を妻にする訳がない。そして一番のポイントとして、この計画殺人説には「戦人と結ばれる」という目が存在しない。いくら事件の謎を戦人が解いたからといって、殺人者を受け入れて幸せになるなんて選択が常識的に考えて成立する訳がない。そもそも計画殺人説は最大の不確定要素である「台風」の説明ができないのだ。台風が4日5日に確実に来るなんて保障はなく、2日くらい前後する可能性も十分にある。台風が来なかった場合、外界から孤立してる訳ではないので、何らかの手段で警察に連絡される可能性は強い。ヤスに殺意があったと仮定した場合、ルーレットの目が成立しないだけではなく、事件そのものが中断される可能性があるのでこれはヤスの計画としては成立しない。
2.殺意はなく、推理ゲームをする予定だった説
ヤスに殺意はなかったと仮定する場合、事件は一族を買収して「狂言殺人」に協力してもらうという筋書きになる。つまり死者が全く出ないと仮定した場合だ。この場合「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」は問題なく成立する。しかし、殺意が無いと仮定してしまうと、どちらとも結ばれなかった場合、爆弾による皆殺しが起きなくなってしまう。さらに、殺意が無いと仮定した場合「なぜヤスは事前に遺族にキャッシュカードを送付してるのか」が説明できなくなってしまう。なので、この完全に殺意が無かったと仮定する推理ゲーム説も違うという事になる。
つまり、ヤスの計画として成立するのは、事件部分は狂言殺人によって誰も殺さないで進め、もし戦人が約束を覚えていなかった場合は爆弾によって全員道連れで皆殺しをするという場合のみなのだ。これが実際の六軒島でヤスがやろうとしていた計画の全容だ。狂言殺人の場合不確定要素である台風も何も問題はなくなる。気付いた人はピーンと来たかもしれないが、EP4~6で3連続で狂言殺人が描かれたのもこの部分の伏線だと思われる。
・狂言殺人に関する伏線
EP1で触れた魔女の手紙について覚えているだろうか。
<特別条項>
契約終了時に、ベアトリーチェは黄金と利子を回収する権利を持つ。ただし、隠された契約の黄金を暴いた者が現れた時、ベアトリーチェはこの権利を全て永遠に放棄しなければならない。利子の回収はこれより行いますが、もし皆様の内の誰か一人でも特別条項を満たせたなら、すでに回収した分も含めて全てお返しいたします。
この部分の本当の意味が今なら分かると思う。ヤスの計画は事件部分が狂言殺人で行われるため、この一文の言う「利子の回収」すなわち、殺した人物の命が碑文を解く事によって返却される事になる。それが成立する条件はまさしくこの「狂言殺人」というケースだけだ。実際に殺害した場合、この特別条項の部分は達成不可能だ。戦人に向けて出題される事件部分として、事件を解くための戦人へのヒントとして書かれた一文なのだろう。
【六軒島の猫箱の中身】
EP7のお茶会で明かされた実際の六軒島で起こったとベルンが語るあの物語は本当に真実なのか?それを検証しよう。実はここの部分は98年世界からの状況証拠で推測可能な物が多い。
1.絵羽が九羽鳥庵で難を逃れている事
九羽鳥庵に行くには、黄金のある地下貴賓室の奥から地下道へ行き、そこから地下通路を通って島の反対側に行くしかない。楼座が森をさまよって九羽鳥庵に辿りついているが、これはまぐれでたどり着いただけだ。実はこの部分は「我らの告白」によって九羽鳥庵に行くには地下通路が唯一の道と説明されており、絵羽が地下貴賓室を通って九羽鳥庵に行ったのは間違いない。つまり、あの部屋を通るという事は碑文が解かれていた事を確定させる。実際の六軒島でも碑文は解かれていたのだ。
2.絵羽だけが生き残ってる事
九羽鳥庵で難を逃れたという事は絵羽が爆薬のスイッチを入れたという事だ。何らかの事件があったからそれを誤魔化すためなのは間違いない。仮に絵羽が主犯だとすると、なぜ秀吉と譲治は生き残っていないのか?絵羽が彼らを殺す事はありえない。しかし、生き残ったのは絵羽だけという事は、絵羽以外の人間が秀吉と譲治を殺害した可能性を思わせる。
3.絵羽と縁寿
なぜ生き残った絵羽は縁寿に島で起こった真相を語ろうとしないのか?ここから絵羽は縁寿が傷つかないように何かを隠してるのはでないか?と推測できる。EP8の一なる真実の書を読んだ縁寿は絶望して自殺しており、実際の六軒島では霧江と留弗夫が何かよからぬ事を企んで何か事件を起こしたのではないかと推測できる。
4.八城十八の証言
EP8の八城十八と縁寿が再会した場面で十八は「私たちは潜水艦基地の方に逃げました」と言っている。「私たち」と複数形で言ってる事から何者かと一緒だった事がわかる。EP7のお茶会にこの伏線はあり、ホーム
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霧江と留弗夫の銃の狙いがズレているという部分と、ベアトが撃たれた場面には「魔女は口からどろりと血をこぼし」としか書かれて無い部分、そして絵羽が気絶から気がついた場面に「傍らには愛する夫の屍。蔵臼夫婦の屍に楼座の屍。死屍が累々と横たわる死の部屋だった」とある部分、ベアトの死体が描写されていないのだ。つまり、戦人はベアトと逃げていたのではないか?と推測できる。そもそも地下通路の事など知らない戦人がそこへ逃げるには誰かに先導されないと知りようがないのだ。
以上の部分からEP7で語られた物語は実際の六軒島で起こった真相だと推測できる。ベルンがフェザリーヌに答え合わせを求められて語られているエピソードという事もあり、嘘が描写された可能性はかなり低いだろう。状況証拠もEP7お茶会の内容を指し示している。
【EP7お茶会で語られた真相の描写時のベアトの態度】
あのベアトの態度は動機と計画の詳細を説明した今なら分かると思う。碑文が解かれたという事は「紗音人格と譲治の恋が成立した」という事であり、ベアト人格は戦人と結ばれる事ができなくなったわけだ。ベアト人格も最終的には抹消される事になり、ヤスの人格は紗音だけに統一され、譲治とその後を幸せに暮らすことになる、という筋書きだろう。ベアトがあのような態度なのはそういう訳で、地の文で「ベアトリーチェは既に死んでいる。自分で殺したのだ」というような描写がされており、ルーレットの結果紗音が選ばれ、ベアトは選ばれなかった事の説明だと思われる。
・銃
お茶会で語られた真相はアレが真実なのだろうが、殺意のないヤスがなぜ銃を持っていたのかという疑問が残る。それはヤスの立場を考えれば分かる。ヤスは実際には碑文を解いてはいるが、それを一部の人間にしか知らせず、右代宮家で使用人として働いている。だから「こういう狂言殺人をしたいんです」と蔵臼夫妻などに頼みに行ったところで相手にされないのは分かっている。おそらく黄金での買収をするのは間違いないけれども、強制力を持たせるために銃を「脅し用」として持っていたのだろう。実際に使うつもりは絶対になかったはずだ。
・ベアトの葬儀
EP7でベアトの葬儀が行われているが、棺桶に入れられた本は恐らくEP6だろう。ベアトと戦人が結婚した物語を入れたに違いない。EP7は戦人が登場しないが、それには理由があり、その部分の伏線部分を抜粋する。
「人は誰かに理解され初めて救われる。死後も何年も経っても……そして一番分かってほしかった男に、理解される事なく生を終えた哀れな魔女を、もう誰かが赦してもいい」
「最後には思い出した。ただし、お前が諦めて消えたよりずっと後の事だがな」
つまり、実際の六軒島ではEP7のお茶会のような事件が起こってしまったが故に「事件部分」自体が中断されてしまい、戦人に問題自体が出題されていないのだ。戦人が真相に到達するための問題が出題されなかったため、戦人が実際に真相に到達するには、事件後記憶を失ってから、幾子の家でネットで話題になっていた「ワインボトルのノート片」を見ないといけなかった。葬儀に戦人がいないのはこの「真相に気付くのが遅かった」という部分の反映であると思われる。
・クレルのハラワタ
クレルのハラワタとして唐突に挿入される3つの場面がある。金蔵のイタリア人からの金強奪部分、九羽鳥庵ベアトが金蔵の思いを拒否してる部分、碑文を解いたヤスが金蔵に対面した時に自分の体の事を家具と言ってる部分、の3つだ。この場面背景が赤くなっているので、嘘の描写ではなく真実の描写と思われる
1.金蔵の金強奪
この描写のポイントは日本軍側の人物に説明をしている場面であるという部分で、金蔵が単独でやろうとした事ならばあのような相談をする必要がない。恐らくは、ベアトを通じてイタリア人が日本人を皆殺しにしようとしているのを聞いた物と思われる。それを踏まえて上官に「それならいっそのこと金を強奪してイタリア人を殺しましょう」と提案していたに違いない。ただこれはただの推測なので断定はできない。
2.九羽鳥庵ベアト
これは金蔵が九羽鳥庵ベアトを妊娠させたという部分の伏線だと思われる。
3.ヤスの家具発言
ヤスの体には事故の時の後遺症で何らかの不具合がある事を明かす伏線だ。インタビューで竜騎士07氏が「ヤスには何らかの性的な不具合があった」「譲治の語る子沢山の未来像がプレッシャーを与えていた」と語ってるので、恐らく子供を産めない体だったのだろう。後遺症として事故の傷跡なども大きく体に残ってるものと思われる。
【クレルのハラワタの意味】
クレルのハラワタとして描写される3つのシーンだが、各シーンが真実だとかミスリードだとか、そういう個別の真偽の話は置いておいて、うみねこ全体に関する意味合いの話をしたい。EP7において出てきた金蔵の過去のエピソードだが、金蔵が語った部分とクレルのハラワタでは明確に違いがある。九羽鳥庵ベアトに関してもEP3では「金蔵」と呼び捨てにしてたのに「お父様」と呼んでいるし、3つ目の「恋の出来ない体」に関しても、クレルの告白には無かった部分だ。この3つのシーンの矛盾はもしかすると、
「さも事実かのように描写されてる物は実は嘘かもしれないよ」
というメッセージなのではないだろうか。例えば、EP1~7において金蔵は厳しく気難しい変人として描写されているが、EP8において「孫に優しい金蔵」という描写がされている。つまり本来EP8の金蔵が昔の優しかった金蔵だったのだとすると、EP1~7の金蔵というのは作者であるヤスや幾子によって描写のコントロールがされていた事になる。
つまり、このように物語全体としてさも事実かのように描写されている部分が実は全くのデタラメの嘘なのではないか?という思考方法の提示として出てきたのではないかと思う。例えば、紗音と嘉音が変装によって同一人物が演じていたというのは、偽書の中なら「読み物としてのトリック」なので筋が通るが、実際の現実世界でヤスがそのような事をしていたとは思えない。心の中だけに存在していて、紗音人格を励ましていたのなら分かるが、実際に男に変装して日々働いていたというのは、あまりにも突飛すぎる。つまり、朱志香が学園祭に嘉音を呼んだというあのエピソード自体が幾子の創作とも考えられるのだ。同様にEP4の楼座と真里亞の親子間の確執の物語も「些細な事実を元にした拡大解釈の創作」あるいは「完全な創作」とも受け取れる。EP6の恋の試練において「19」という数字の説明がされている部分がある。「本当の当主の年齢」「物語を作るのに要した日数」といった場面だ。あのヤスしか知り得ない情報を幾子が知っていたのはおかしいので、あれも「幾子による創作」とも受け取れる。そういう考え方で行くと、EP1の留弗夫の隠し事の気配の描写も、あれは単なる意味の無いミスリードとして登場した描写を、幾子がさも「戦人の生まれの問題」を話そうとしてたかのように創作してEP2以降で書いていたとも考えられる。
ここで大事なのは「どれが真実なのか?」という話ではなく、「物語の楽しみ方としての思考方法」がクレルのハラワタという部分という事だ。ベルンが語っていたように、最初は愛でて楽しみ、次にハラワタを引き裂いて楽しむという事で、描写を信じて楽しむ。そして次にその描写の真偽を疑って楽しむという事だ。1から100まで全てミステリーとして完全解明しようと思うのなら、描写の真偽をクレルのハラワタ的思考法で明らかにしていくしかないが、でも物語を竜騎士07先生が作る時に、例えば前述した「19」に関する説明を「幾子が創作した完全な創作」という設定で物語を書くような意味の無い物語の作り方をするだろうか?これはプレイヤーへのうみねこの楽しみ方の提示であって、重箱の隅をつつくような楽しみ方の提示ではないと私は感じた。
「愛が無ければ真実は見えない」といわれているように、物語をプレイヤーに愛ある解釈で楽しんでもらうためのギミックがクレルのハラワタなのだと思う。
・EP7は何に基づいて書かれているのか
EP7ももちろん八城十八による偽書だ。このEP7は何に基づいて書かれているのか?という点だが、EP2の第一の晩の後に、紗音が金蔵に呼ばれて筆耕をしていたのを覚えているだろうか。おそらく金蔵の告白であるあの筆耕がEP4で大月教授が語っていたような「右代宮蔵書」として幾子の元に渡ったのではないかと思われる。恐らく、金蔵の過去部分と屋敷でのヤスの生活なども書かれているに違いない。
ではヤスの具体的な回想部分だが、EP8の戦人とベアトが逃げている部分の描写を思い出してほしい。島の爆発は24時の夜中に起きたはずだが、あの2人が逃げているのは明るい時間帯なのだ。仮に朝の8~9時くらいだったとしても、24時以降かなりの時間が過ぎているのが分かる。その間2人は一体何をしていたのか?戦人は当然事件の事をヤスに聞いたはずで、色々とヤスと話をしていたに違いない。恐らくこの時にヤスは自分の計画の部分は隠し、それ以外の問題のない部分を語っていたに違いない。EP7はその時の話を元に構成されていると思われる。
EP7の内容について一つ大事なのは、「プレイヤー」と「うみねこの現実世界の人々」この両者の情報量の決定的違いだ。プレイヤーはEP8で十八の情報を明かされてるため、偽書が戦人の記憶に基づいて書かれてる事を知っている。だが、うみねこの現実世界の人々にはその情報がない。つまりEP7の内容を発表したとしても、うみねこの現実世界の人々にとっては「六軒島の事件とは何の関係も無い一作家が書いた悪質なフィクション」としか認識されないはずだ。信用する根拠がまったく存在しないのだ。この両者の情報量の違いは非常に大切だ。98年世界にEP7の偽書を流すという行為は真相を暴露する事と錯覚しがちだが、真の意味で暴露だと認識可能なのは私達プレイヤーだけなのだ。
・ベルンの赤字
「このゲームに、ハッピーエンドは与えない。」これは非常に重要で、世界構造をプレイヤーに分かってもらうための赤字だ。ゲームというのはもちろんゲーム盤の事であり、EP8の最後の部分が黄金郷が消え去り、縁寿の魔法によって全員生き返っているだけという部分はハッピーエンドではないとも言えるだろう。これは現実の98年世界とは関係のない赤字であり、そもそも赤字で未来がハッピーエンドではないと確定できるのはどういう世界なのか?という事なのだ。うみねこが98年世界に存在している偽書の世界であると分かってる人には特に問題のない赤字なのだが、それに気付いていないプレイヤーのために「この世界は偽書の世界ですよ、現実ではありませんよ」と明かすための赤字だ。
・メッセージボトルの意味
メッセージボトルにはどういう意味があるのかというと、紗音と譲治が結ばれるという目が出た場合、事件は1人の死者も出ずに狂言殺人として終わり、全員元の生活に戻る事になり、紗音は譲治と結婚をし、ベアトの中の恋の芽は人格と共に抹消される事になる。つまり、ベアト人格の戦人への恋心が誰にも知られる事なく抹消されてしまうケースがあるのだ。その時の事を考えて、いくつもの「密室」「嘘」「共犯」という構成の事件を作って海に投げたに違いない。もちろん、これが誰かの目に触れる可能性は低いし、ましてや戦人が見る可能性はもっと低いだろう。ヤスにとっては発見されなかったのなら、それはそれで受け入れたという事なのだ。ただ奇跡的に戦人が読んでくれる可能性を信じて投じた物と思われる。うみねこはこのヤスの思いの通り、記憶を失った十八がメッセージボトルを読み、真相に至った物語なのだ。キャッシュカードについてはEP4で詳細に説明してるので、それを参照してほしい。
・真犯人とは誰なのか?
メッセージボトルや八城十八の偽書の物語であるEP1~4のベアトのゲーム盤の真犯人とは一体誰なのか?人格を無視して答えるならば、このEP7で出てきたヤスと言えるだろうが、ヤスには3つの人格が存在する。そして、ここまでの物語から分かるように事件部分は「ベアトと戦人の恋の成立」を願って作られた物だ。このEP7でついに犯人を絞り込むための決定的な赤字が出た。
「使用人が犯人であることを禁ずッ!!……ヴァンダイン二十則、第11則。」
この赤字はインタビューで「真犯人の事を本当の意味で理解できてるか試すために出している」と竜騎士07先生が語っている。「ヤスの中に存在する3つの人格の内、誰が真犯人なのか、あなたはきちんと特定できていますか?」という意図で出された赤字なのだろう。つまり犯人はヤスのベアト人格、ベアトリーチェと言う事だ。碑文を解いた後、ヤスは右代宮家で使用人生活を続けている。なので紗音と嘉音はヤスが碑文を解いたとしても使用人である事実に変わりはない。動機面から考えても、紗音人格は譲治と恋をしてる人格なので、事件を起こして戦人に真相に至ってもらうという動機そのものが存在しない人格だ。もちろんその動機を持ってるのはベアト人格である。
この犯人の正体に至らせないために、うみねこは実に巧みなミスリードをやっている。EP1の時点からベアトリーチェという人物は「ファンタジー世界の人物」という印象で塗り固められ、おまけにメタ世界でも魔法を主張する人物として登場する。さらにEP3で説明した在島人数に含まれないための「論点のすり替えトリック」なども使い、徹底的にプレイヤーの頭の中に「ベアトはファンタジー世界の人物」という印象を植え付け、犯人考察の際に自動的に犯人から除外されるような誘導をやっているのだ。しかしベアトリーチェという人物はヤスの有する1人格であり、ファンタジー的な存在でもない、ただの人間なのだ。
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EP7のヤスの回想から読み取れる重要な部分は大きく3つだ。それはヤスの身の上話の部分とヤスが黄金を受けついだ事とヤスの恋の話だ。ヤスは金蔵が夏妃に預けた九羽鳥庵のベアトの子供であり、崖から落ちたものの、南條により一命を取りとめ福音の家で幼少期を過ごしている。右代宮家に使用人として源次に連れてこられており、金蔵がまた過ちを犯すのを恐れてヤスの年を3歳少なく申告している。碑文の謎が掲げられた時に紗音と嘉音がいる時に源次は「懐かしき故郷とは台湾の事だ」とヒントを出しており、源次は元々ヤスが金蔵の子供であると明かすつもりだったのが分かる。つまり、右代宮家に連れてこられ、碑文を解き、金蔵が反省したのを確認して2人を引き合わせるという筋書きがあり、それがクレルの言う「人生の岐路に置いて私は一度も自分で運命を決める事が出来なかった」という言葉の意味だ。
ヤスが碑文を解く事によって共犯の買収に使える黄金と、最後に皆殺しが可能な爆弾を手に入れてしまい、本編でいう「本当の魔力を手にしてしまった」という部分にも繋がる。これで事件のおぜん立てがそろった訳だ。
ヤスの回想で重要なのは紗音人格の戦人との恋の描写であり、戦人が約束を忘れていた事により紗音は耐えられなくなり、戦人への恋の芽をベアト人格に預けている。この部分はEP6の恋の試練の部分に伏線があり、ベアトは主人格の「お母様」によって戦人を愛する人格へと作り直されてる描写があり、これ以降ベアトは「自分が戦人を愛する人格」として行動をする。ヤスの回想は事件の2年前で終わっているが、その後は延々本編中で語られた通りだ。紗音が譲治に恋をして86年の親族会議の日にプロポーズされる。一方戦人が86年に帰って来る事によってベアトに預けていた戦人の恋の芽が再び活動を始める。EP6の恋の試練の部分が正にこの部分を指しており「2つの人格が違う人間に恋をしている」状態だ。クレルも「決闘はしたのです。決着もつきかけていた。でも86年という年は余りに無慈悲が過ぎた。なぜ86年だったのか…」と語っている。85年なら譲治がプロポーズをしてないので戦人と素直に結ばれたかもしれない。あるいは87年なら既に譲治と結婚しているから、戦人の事はすんなりあきらめられるかもしれない。
・動機のポイント
ここまでの部分から重要なのはヤスが「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」これを自分で決められなくなっている点だ。ヤスが右代宮家に連れてこられ、碑文を解くまでの過程を「自分の意思が一切関与できなかった」と信じているヤスは、自分の運命をルーレットに任せる決断をしている。そして、自分の決めたそのルールに絶対に従うと。つまりヤスの動機というのは「紗音人格と譲治の恋」「ベアト人格と戦人の恋」をルーレットによりどっちかに決めるという事なのだ。動機というのを「殺人事件を起こす動機」という風に考えるのはその時点で間違いだ。ヤスの回想に右代宮家に対する恨みなどは一切描かれてなく、あくまでもヤスは事件をルーレットの手段として使うだけで、事件自体が目的ではない。
・ヤスのルーレットの目
以上の事から、ヤスがやろうとしてる計画にはルーレットの目として「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」が存在していないといけない。なぜならそれをルーレットにより選ぶ事が目的であるからだ。そしてもう一つ「誰とも結ばれない」が存在する。これは以前に語った部分でもあるのだが、「そなたの罪により、この島の人間が、大勢死ぬ。誰も逃さぬ、全て死ぬ。」という赤字は、戦人が約束を忘れている事が原因となって、島の人間が全員爆弾によって皆殺しにされる、と読み解ける。戦人が約束を忘れているという事は、「戦人と結ばれる」が達成できなくなる。これは譲治と結ばれず、戦人とも結ばれない目が出た場合、ヤスは爆弾によって全員を殺し、良くいえば「黄金郷で全ての人格が思い人と結ばれる」悪く言えば「誰とも結ばれなかった絶望ゆえに心中をする」という事なのだ。
・それぞれの恋のルーレットの目
これまで過去EPで語って来たように「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」はヤスが奇跡的な低確率で出る事を祈っているルーレットの目であり、事件の中でも「奇跡的に出る低確率なルーレットの目」といえる。まず紗音は譲治にプロポーズされているので、碑文が解かれると事件を中断し、黄金を解いた人に継承し、紗音は譲治と結婚しそのまま島を離れて幸せになるという目が成立する。碑文殺人による事件部分自体は過去何度も「戦人が解ける事を祈って作られた」と語られてるように、戦人のために作られたものなので譲治には関係がない。つまり、戦人が事件の謎を解き、犯人の正体を暴き、トリックや事件の構成要素「密室」「嘘」「共犯」や犯人の動機を推測した先に戦人が約束を思い出し、最終的に戦人がヤスの思いを受け止めるという可能性にかけた物で、これも確率的には非常に低く、それでもこの目が出たならば「戦人と結ばれる」が成立する。そして最後に誰とも結ばれなかった場合爆弾によって全員皆殺しが起きる。
・ヤスと魔法大系の思想
ヤスが最後に爆弾による皆殺しを予定してる部分は、「皆殺しにしたいから設定してる」という事ではない。これはEP2で詳しく解説した彼女の魔法大系の思想と「リスクの概念」が非常に重要になるので参照してほしい。
・奇跡が無ければ達成できない願い
ヤスは赤ん坊の時に使用人と共に崖から突き落とされ、大けがをした際に「恋の出来ない体」になってしまったと、クレルのハラワタで挿入されるシーンで語られている。インタビューでも竜騎士07先生によって、性的な不具合によって子供が産めない体になってしまったんじゃないか、と読み取れるようなニュアンスの説明がされており(譲治の語る子沢山の未来像が紗音にプレッシャーを与えていたというような説明)、恋愛を成就させる事自体がヤスにとっては難しい事だ。相手が自分の体を受け入れて一生愛してくれるのかどうかなんて分からない。ヤスが奇跡的な低確率で出るルーレットの目に運命を託しているのは、奇跡が起きるのなら、きっと自分の「恋の出来ない体」の事も相手が受け入れてくれる奇跡が起こるに違いないという、ヤスの願いなのだろう。
・クレルが理御に言ったセリフ
「ありがとう。……幸せになって。そして素敵な人と出会って。……願わくば、あなたが魔女として目覚めず、ニンゲンとして生き。……一なる魂を以って、愛するたった一人の人を愛しぬける……。……そんな人生を送る事を、願っています」
・ヤスの具体的な計画
ここまで語って来たヤスのルーレットの目が出るために、具体的にはどういう事件を想定していたのか、これはハッキリ断定できるので詳しく説明をしたい。一番大事なのは事件部分であり、「ヤスに殺意があったのか」「ヤスには殺意がなかったのか」これが非常に重要になって来る。
1.殺意のある計画殺人説
ヤスがまず右代宮の人間を殺そうと思っており、計画殺人だったと仮定した場合、まず事件が発生する前に碑文が解かれたならば、「譲治と結ばれる」が成立する。しかし、碑文は何も前日だけに解かれるとは限らない。第一の晩の後にEP3のように解かれる可能性だってあり、その場合いくら碑文が解かれて紗音が譲治と結ばれるという目が出たとしても、殺人者を妻にする訳がない。そして一番のポイントとして、この計画殺人説には「戦人と結ばれる」という目が存在しない。いくら事件の謎を戦人が解いたからといって、殺人者を受け入れて幸せになるなんて選択が常識的に考えて成立する訳がない。そもそも計画殺人説は最大の不確定要素である「台風」の説明ができないのだ。台風が4日5日に確実に来るなんて保障はなく、2日くらい前後する可能性も十分にある。台風が来なかった場合、外界から孤立してる訳ではないので、何らかの手段で警察に連絡される可能性は強い。ヤスに殺意があったと仮定した場合、ルーレットの目が成立しないだけではなく、事件そのものが中断される可能性があるのでこれはヤスの計画としては成立しない。
2.殺意はなく、推理ゲームをする予定だった説
ヤスに殺意はなかったと仮定する場合、事件は一族を買収して「狂言殺人」に協力してもらうという筋書きになる。つまり死者が全く出ないと仮定した場合だ。この場合「譲治と結ばれる」「戦人と結ばれる」は問題なく成立する。しかし、殺意が無いと仮定してしまうと、どちらとも結ばれなかった場合、爆弾による皆殺しが起きなくなってしまう。さらに、殺意が無いと仮定した場合「なぜヤスは事前に遺族にキャッシュカードを送付してるのか」が説明できなくなってしまう。なので、この完全に殺意が無かったと仮定する推理ゲーム説も違うという事になる。
つまり、ヤスの計画として成立するのは、事件部分は狂言殺人によって誰も殺さないで進め、もし戦人が約束を覚えていなかった場合は爆弾によって全員道連れで皆殺しをするという場合のみなのだ。これが実際の六軒島でヤスがやろうとしていた計画の全容だ。狂言殺人の場合不確定要素である台風も何も問題はなくなる。気付いた人はピーンと来たかもしれないが、EP4~6で3連続で狂言殺人が描かれたのもこの部分の伏線だと思われる。
・狂言殺人に関する伏線
EP1で触れた魔女の手紙について覚えているだろうか。
<特別条項>
契約終了時に、ベアトリーチェは黄金と利子を回収する権利を持つ。ただし、隠された契約の黄金を暴いた者が現れた時、ベアトリーチェはこの権利を全て永遠に放棄しなければならない。利子の回収はこれより行いますが、もし皆様の内の誰か一人でも特別条項を満たせたなら、すでに回収した分も含めて全てお返しいたします。
この部分の本当の意味が今なら分かると思う。ヤスの計画は事件部分が狂言殺人で行われるため、この一文の言う「利子の回収」すなわち、殺した人物の命が碑文を解く事によって返却される事になる。それが成立する条件はまさしくこの「狂言殺人」というケースだけだ。実際に殺害した場合、この特別条項の部分は達成不可能だ。戦人に向けて出題される事件部分として、事件を解くための戦人へのヒントとして書かれた一文なのだろう。
【六軒島の猫箱の中身】
EP7のお茶会で明かされた実際の六軒島で起こったとベルンが語るあの物語は本当に真実なのか?それを検証しよう。実はここの部分は98年世界からの状況証拠で推測可能な物が多い。
1.絵羽が九羽鳥庵で難を逃れている事
九羽鳥庵に行くには、黄金のある地下貴賓室の奥から地下道へ行き、そこから地下通路を通って島の反対側に行くしかない。楼座が森をさまよって九羽鳥庵に辿りついているが、これはまぐれでたどり着いただけだ。実はこの部分は「我らの告白」によって九羽鳥庵に行くには地下通路が唯一の道と説明されており、絵羽が地下貴賓室を通って九羽鳥庵に行ったのは間違いない。つまり、あの部屋を通るという事は碑文が解かれていた事を確定させる。実際の六軒島でも碑文は解かれていたのだ。
2.絵羽だけが生き残ってる事
九羽鳥庵で難を逃れたという事は絵羽が爆薬のスイッチを入れたという事だ。何らかの事件があったからそれを誤魔化すためなのは間違いない。仮に絵羽が主犯だとすると、なぜ秀吉と譲治は生き残っていないのか?絵羽が彼らを殺す事はありえない。しかし、生き残ったのは絵羽だけという事は、絵羽以外の人間が秀吉と譲治を殺害した可能性を思わせる。
3.絵羽と縁寿
なぜ生き残った絵羽は縁寿に島で起こった真相を語ろうとしないのか?ここから絵羽は縁寿が傷つかないように何かを隠してるのはでないか?と推測できる。EP8の一なる真実の書を読んだ縁寿は絶望して自殺しており、実際の六軒島では霧江と留弗夫が何かよからぬ事を企んで何か事件を起こしたのではないかと推測できる。
4.八城十八の証言
EP8の八城十八と縁寿が再会した場面で十八は「私たちは潜水艦基地の方に逃げました」と言っている。「私たち」と複数形で言ってる事から何者かと一緒だった事がわかる。EP7のお茶会にこの伏線はあり、ホーム
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霧江と留弗夫の銃の狙いがズレているという部分と、ベアトが撃たれた場面には「魔女は口からどろりと血をこぼし」としか書かれて無い部分、そして絵羽が気絶から気がついた場面に「傍らには愛する夫の屍。蔵臼夫婦の屍に楼座の屍。死屍が累々と横たわる死の部屋だった」とある部分、ベアトの死体が描写されていないのだ。つまり、戦人はベアトと逃げていたのではないか?と推測できる。そもそも地下通路の事など知らない戦人がそこへ逃げるには誰かに先導されないと知りようがないのだ。
以上の部分からEP7で語られた物語は実際の六軒島で起こった真相だと推測できる。ベルンがフェザリーヌに答え合わせを求められて語られているエピソードという事もあり、嘘が描写された可能性はかなり低いだろう。状況証拠もEP7お茶会の内容を指し示している。
【EP7お茶会で語られた真相の描写時のベアトの態度】
あのベアトの態度は動機と計画の詳細を説明した今なら分かると思う。碑文が解かれたという事は「紗音人格と譲治の恋が成立した」という事であり、ベアト人格は戦人と結ばれる事ができなくなったわけだ。ベアト人格も最終的には抹消される事になり、ヤスの人格は紗音だけに統一され、譲治とその後を幸せに暮らすことになる、という筋書きだろう。ベアトがあのような態度なのはそういう訳で、地の文で「ベアトリーチェは既に死んでいる。自分で殺したのだ」というような描写がされており、ルーレットの結果紗音が選ばれ、ベアトは選ばれなかった事の説明だと思われる。
・銃
お茶会で語られた真相はアレが真実なのだろうが、殺意のないヤスがなぜ銃を持っていたのかという疑問が残る。それはヤスの立場を考えれば分かる。ヤスは実際には碑文を解いてはいるが、それを一部の人間にしか知らせず、右代宮家で使用人として働いている。だから「こういう狂言殺人をしたいんです」と蔵臼夫妻などに頼みに行ったところで相手にされないのは分かっている。おそらく黄金での買収をするのは間違いないけれども、強制力を持たせるために銃を「脅し用」として持っていたのだろう。実際に使うつもりは絶対になかったはずだ。
・ベアトの葬儀
EP7でベアトの葬儀が行われているが、棺桶に入れられた本は恐らくEP6だろう。ベアトと戦人が結婚した物語を入れたに違いない。EP7は戦人が登場しないが、それには理由があり、その部分の伏線部分を抜粋する。
「人は誰かに理解され初めて救われる。死後も何年も経っても……そして一番分かってほしかった男に、理解される事なく生を終えた哀れな魔女を、もう誰かが赦してもいい」
「最後には思い出した。ただし、お前が諦めて消えたよりずっと後の事だがな」
つまり、実際の六軒島ではEP7のお茶会のような事件が起こってしまったが故に「事件部分」自体が中断されてしまい、戦人に問題自体が出題されていないのだ。戦人が真相に到達するための問題が出題されなかったため、戦人が実際に真相に到達するには、事件後記憶を失ってから、幾子の家でネットで話題になっていた「ワインボトルのノート片」を見ないといけなかった。葬儀に戦人がいないのはこの「真相に気付くのが遅かった」という部分の反映であると思われる。
・クレルのハラワタ
クレルのハラワタとして唐突に挿入される3つの場面がある。金蔵のイタリア人からの金強奪部分、九羽鳥庵ベアトが金蔵の思いを拒否してる部分、碑文を解いたヤスが金蔵に対面した時に自分の体の事を家具と言ってる部分、の3つだ。この場面背景が赤くなっているので、嘘の描写ではなく真実の描写と思われる
1.金蔵の金強奪
この描写のポイントは日本軍側の人物に説明をしている場面であるという部分で、金蔵が単独でやろうとした事ならばあのような相談をする必要がない。恐らくは、ベアトを通じてイタリア人が日本人を皆殺しにしようとしているのを聞いた物と思われる。それを踏まえて上官に「それならいっそのこと金を強奪してイタリア人を殺しましょう」と提案していたに違いない。ただこれはただの推測なので断定はできない。
2.九羽鳥庵ベアト
これは金蔵が九羽鳥庵ベアトを妊娠させたという部分の伏線だと思われる。
3.ヤスの家具発言
ヤスの体には事故の時の後遺症で何らかの不具合がある事を明かす伏線だ。インタビューで竜騎士07氏が「ヤスには何らかの性的な不具合があった」「譲治の語る子沢山の未来像がプレッシャーを与えていた」と語ってるので、恐らく子供を産めない体だったのだろう。後遺症として事故の傷跡なども大きく体に残ってるものと思われる。
【クレルのハラワタの意味】
クレルのハラワタとして描写される3つのシーンだが、各シーンが真実だとかミスリードだとか、そういう個別の真偽の話は置いておいて、うみねこ全体に関する意味合いの話をしたい。EP7において出てきた金蔵の過去のエピソードだが、金蔵が語った部分とクレルのハラワタでは明確に違いがある。九羽鳥庵ベアトに関してもEP3では「金蔵」と呼び捨てにしてたのに「お父様」と呼んでいるし、3つ目の「恋の出来ない体」に関しても、クレルの告白には無かった部分だ。この3つのシーンの矛盾はもしかすると、
「さも事実かのように描写されてる物は実は嘘かもしれないよ」
というメッセージなのではないだろうか。例えば、EP1~7において金蔵は厳しく気難しい変人として描写されているが、EP8において「孫に優しい金蔵」という描写がされている。つまり本来EP8の金蔵が昔の優しかった金蔵だったのだとすると、EP1~7の金蔵というのは作者であるヤスや幾子によって描写のコントロールがされていた事になる。
つまり、このように物語全体としてさも事実かのように描写されている部分が実は全くのデタラメの嘘なのではないか?という思考方法の提示として出てきたのではないかと思う。例えば、紗音と嘉音が変装によって同一人物が演じていたというのは、偽書の中なら「読み物としてのトリック」なので筋が通るが、実際の現実世界でヤスがそのような事をしていたとは思えない。心の中だけに存在していて、紗音人格を励ましていたのなら分かるが、実際に男に変装して日々働いていたというのは、あまりにも突飛すぎる。つまり、朱志香が学園祭に嘉音を呼んだというあのエピソード自体が幾子の創作とも考えられるのだ。同様にEP4の楼座と真里亞の親子間の確執の物語も「些細な事実を元にした拡大解釈の創作」あるいは「完全な創作」とも受け取れる。EP6の恋の試練において「19」という数字の説明がされている部分がある。「本当の当主の年齢」「物語を作るのに要した日数」といった場面だ。あのヤスしか知り得ない情報を幾子が知っていたのはおかしいので、あれも「幾子による創作」とも受け取れる。そういう考え方で行くと、EP1の留弗夫の隠し事の気配の描写も、あれは単なる意味の無いミスリードとして登場した描写を、幾子がさも「戦人の生まれの問題」を話そうとしてたかのように創作してEP2以降で書いていたとも考えられる。
ここで大事なのは「どれが真実なのか?」という話ではなく、「物語の楽しみ方としての思考方法」がクレルのハラワタという部分という事だ。ベルンが語っていたように、最初は愛でて楽しみ、次にハラワタを引き裂いて楽しむという事で、描写を信じて楽しむ。そして次にその描写の真偽を疑って楽しむという事だ。1から100まで全てミステリーとして完全解明しようと思うのなら、描写の真偽をクレルのハラワタ的思考法で明らかにしていくしかないが、でも物語を竜騎士07先生が作る時に、例えば前述した「19」に関する説明を「幾子が創作した完全な創作」という設定で物語を書くような意味の無い物語の作り方をするだろうか?これはプレイヤーへのうみねこの楽しみ方の提示であって、重箱の隅をつつくような楽しみ方の提示ではないと私は感じた。
「愛が無ければ真実は見えない」といわれているように、物語をプレイヤーに愛ある解釈で楽しんでもらうためのギミックがクレルのハラワタなのだと思う。
・EP7は何に基づいて書かれているのか
EP7ももちろん八城十八による偽書だ。このEP7は何に基づいて書かれているのか?という点だが、EP2の第一の晩の後に、紗音が金蔵に呼ばれて筆耕をしていたのを覚えているだろうか。おそらく金蔵の告白であるあの筆耕がEP4で大月教授が語っていたような「右代宮蔵書」として幾子の元に渡ったのではないかと思われる。恐らく、金蔵の過去部分と屋敷でのヤスの生活なども書かれているに違いない。
ではヤスの具体的な回想部分だが、EP8の戦人とベアトが逃げている部分の描写を思い出してほしい。島の爆発は24時の夜中に起きたはずだが、あの2人が逃げているのは明るい時間帯なのだ。仮に朝の8~9時くらいだったとしても、24時以降かなりの時間が過ぎているのが分かる。その間2人は一体何をしていたのか?戦人は当然事件の事をヤスに聞いたはずで、色々とヤスと話をしていたに違いない。恐らくこの時にヤスは自分の計画の部分は隠し、それ以外の問題のない部分を語っていたに違いない。EP7はその時の話を元に構成されていると思われる。
EP7の内容について一つ大事なのは、「プレイヤー」と「うみねこの現実世界の人々」この両者の情報量の決定的違いだ。プレイヤーはEP8で十八の情報を明かされてるため、偽書が戦人の記憶に基づいて書かれてる事を知っている。だが、うみねこの現実世界の人々にはその情報がない。つまりEP7の内容を発表したとしても、うみねこの現実世界の人々にとっては「六軒島の事件とは何の関係も無い一作家が書いた悪質なフィクション」としか認識されないはずだ。信用する根拠がまったく存在しないのだ。この両者の情報量の違いは非常に大切だ。98年世界にEP7の偽書を流すという行為は真相を暴露する事と錯覚しがちだが、真の意味で暴露だと認識可能なのは私達プレイヤーだけなのだ。
・ベルンの赤字
「このゲームに、ハッピーエンドは与えない。」これは非常に重要で、世界構造をプレイヤーに分かってもらうための赤字だ。ゲームというのはもちろんゲーム盤の事であり、EP8の最後の部分が黄金郷が消え去り、縁寿の魔法によって全員生き返っているだけという部分はハッピーエンドではないとも言えるだろう。これは現実の98年世界とは関係のない赤字であり、そもそも赤字で未来がハッピーエンドではないと確定できるのはどういう世界なのか?という事なのだ。うみねこが98年世界に存在している偽書の世界であると分かってる人には特に問題のない赤字なのだが、それに気付いていないプレイヤーのために「この世界は偽書の世界ですよ、現実ではありませんよ」と明かすための赤字だ。
・メッセージボトルの意味
メッセージボトルにはどういう意味があるのかというと、紗音と譲治が結ばれるという目が出た場合、事件は1人の死者も出ずに狂言殺人として終わり、全員元の生活に戻る事になり、紗音は譲治と結婚をし、ベアトの中の恋の芽は人格と共に抹消される事になる。つまり、ベアト人格の戦人への恋心が誰にも知られる事なく抹消されてしまうケースがあるのだ。その時の事を考えて、いくつもの「密室」「嘘」「共犯」という構成の事件を作って海に投げたに違いない。もちろん、これが誰かの目に触れる可能性は低いし、ましてや戦人が見る可能性はもっと低いだろう。ヤスにとっては発見されなかったのなら、それはそれで受け入れたという事なのだ。ただ奇跡的に戦人が読んでくれる可能性を信じて投じた物と思われる。うみねこはこのヤスの思いの通り、記憶を失った十八がメッセージボトルを読み、真相に至った物語なのだ。キャッシュカードについてはEP4で詳細に説明してるので、それを参照してほしい。
・真犯人とは誰なのか?
メッセージボトルや八城十八の偽書の物語であるEP1~4のベアトのゲーム盤の真犯人とは一体誰なのか?人格を無視して答えるならば、このEP7で出てきたヤスと言えるだろうが、ヤスには3つの人格が存在する。そして、ここまでの物語から分かるように事件部分は「ベアトと戦人の恋の成立」を願って作られた物だ。このEP7でついに犯人を絞り込むための決定的な赤字が出た。
「使用人が犯人であることを禁ずッ!!……ヴァンダイン二十則、第11則。」
この赤字はインタビューで「真犯人の事を本当の意味で理解できてるか試すために出している」と竜騎士07先生が語っている。「ヤスの中に存在する3つの人格の内、誰が真犯人なのか、あなたはきちんと特定できていますか?」という意図で出された赤字なのだろう。つまり犯人はヤスのベアト人格、ベアトリーチェと言う事だ。碑文を解いた後、ヤスは右代宮家で使用人生活を続けている。なので紗音と嘉音はヤスが碑文を解いたとしても使用人である事実に変わりはない。動機面から考えても、紗音人格は譲治と恋をしてる人格なので、事件を起こして戦人に真相に至ってもらうという動機そのものが存在しない人格だ。もちろんその動機を持ってるのはベアト人格である。
この犯人の正体に至らせないために、うみねこは実に巧みなミスリードをやっている。EP1の時点からベアトリーチェという人物は「ファンタジー世界の人物」という印象で塗り固められ、おまけにメタ世界でも魔法を主張する人物として登場する。さらにEP3で説明した在島人数に含まれないための「論点のすり替えトリック」なども使い、徹底的にプレイヤーの頭の中に「ベアトはファンタジー世界の人物」という印象を植え付け、犯人考察の際に自動的に犯人から除外されるような誘導をやっているのだ。しかしベアトリーチェという人物はヤスの有する1人格であり、ファンタジー的な存在でもない、ただの人間なのだ。
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